テレワークを活用した働き方改革・女性活躍社会の実現

優秀人材確保のためのテレワーク導入実践事業

当社の生産管理システムを35年以上サポートしている株式会社電算システム(大垣市)と共に、「テレワーク導入実践事業」(令和2年度 岐阜県IoTコンソーシアムワーキンググループ事業費補助事業)に参画。働き方改革・女性活躍社会の実現を共通項目として岐阜県内の中小企業のテレワーク導入実践を進める目的で2社によるWGを結成した。

テーマ:テレワークによる生産性の向上

テーマの背景①:当社の「ものづくり」

少量・多品種・多工程の生産を実行

日当たり1000品番(5000工程を超える)を加工出荷。金属プレス加工は大量生産に適しているが、当社は極小ロット品(月100個以下)や小ロット品(月500個以下)といった要求も受けており、極小・小ロット品の加工が多く、月間受注品番は1500品番を超える。

また、プレス加工のみではなく溶接加工・組立加工・タップ加工・研磨加工など多種多様な工程で「ものづくり」をしている。

テーマの背景②:当社の問題点

生産管理の作業量が大きく複雑化。マンパワーの不足から最適な生産計画・指示が出せず生産性の悪化

少量多品種多工程を進める生産能力はあるが、生産能力を効率よく活かす生産管理能力が不足。

新規受注が毎年100品番単位で増大しており、現行の生産管理システム、担当員(4名)のマンパワーでは、一日あたり1000種類、 5000工程の生産管理業務を遂行するには限界を超えている。

時間外労働が増え、最適な生産計画・指示を提供できず加工と出荷(かんばん)指示との齟齬誤りが多発。生産遅延、出荷遅延となり生産活動の混乱・ムダ・損失の発生の原因に。

テーマの背景③:なぜ生産管理を改善すると生産性が向上するか

生産管理は航空管制と同じ。最適な生産指示が生産性向上に直結する 

工場においての生産管理はまさに航空機が安全に運行するための航空管制と同じ。当社は一日当たり1000品番・5000工程以上が離着陸する飛行場のようなもの。

生産管理が最適な計画を立て、多種多様な顧客からの要求や変更に機敏に反応し生産指示をすることで工場は理路整然と動く。しかし生産管理が正しく機能しないと工場は混乱し、欠品、在庫過剰などのムダが発生。生産性の悪化となり、大きな損失が出てしまう。

テーマの背景④:当社の問題点 受注から出荷まで流れで確認

マンパワーが不足している部門にテレワークを活用し優秀な人材による支援が有効

子育て中のMさん(優秀人材)にテレワークで支援してもらおう

[Mさんプロフィール]

5歳と1歳の2児の子育て中の優秀人材。当社で15年勤続のべテラン。高いスキルを所持し、顧客からの信頼が高く同僚からの信頼も強固。仕事への情熱、モチベーションが高く、働く意欲も大きい。

5年前、出産を機に退職。居住地が郡上市(通勤距離が長い) 子育ての支援をしてくれる人がおらず、 将来的には義父母の生活支援(介護)を予定している 。

テレワークを活用すればMさんに働いてもらえる。

そこで、テレワークの基盤を備えるため、IoT・ICT等を活用したテレワーク等の生産性向上につながる調査・実証事業 に応募し、採択された。


テレワークを活用した働き方改革・女性活躍社会の実現 −優秀人材確保のためのテレワーク導入実践事業−として展開

Mさん 本事業応募時 インタビューの抄録

わたしは、5年前に出産を理由に退職しました。仕事が面白くて、ずっと勤めたかったのですが、結婚後、主人のご両親と同居する計画があり郡上の奥地に暮らすことになり通勤が困難なため退職しました。いま、二人の子供に恵まれ子育て真っ最中で、ますます元の仕事に復帰できる状況ではありませんが、来年から下のこの子(1歳)を保育園に預けて働こうと、就業先を探しましたが通える範囲には見つけることができません。そんなとき、社長から今回のテレワークの導入実証事業のお話をうかがいました。もしこの事業が実現するなら、こんなありがたいことはありません。以前携わっていた仕事を自宅でできる。子供を抱えながら、山の中からも価値ある仕事ができます。将来的には主人のご両親の面倒をみながらも仕事が続けられます。この事業は、わたしにとってすばらしいことなのですが、おそらくわたしと同じように家庭の事情で山奥に暮らす女性にとっても、新しい働き方の提案になります。同じような女性の活躍の場が広がります。働き方改革、女性活躍社会の実現という言葉は知っていましたが、中央工機のような小さな会社でも実現できるなら、ただの「言葉」が現実のものになります。ぜひ、わたしたちに働くチャンスをください。

テレワーク環境の整備

今回、対象となるMさんの自宅には、光回線がなくネット接続は携帯電話のデザリングを使用した。デザリングは回線使用料に制限があるため、パケットを抑制させることが重要。

→PC設定をテレワーク専用化

  • 帯域を消費する設定を外す。
  • ローカルデバイスとリソースは使用なし。
  • 解像度を下げる
テレワークシステムの特徴
  • Windows10の標準機能リモートディスクトップ接続を活用し費用負担なし=安価 
  • FortiGATE(通信セキュリティ機器)を活用し安心、安全なリモート接続=安全
  • ログインID、パスワードを強化=安全 
  • 通常の生産管理業務を在宅ですべて可能とした=『働き方改革』を実現 
  • 在宅先端末はFortiクライアントとなり基幹システムへの接続ライセンス費は不要=安価
  • 接続時、機能制限はなく社内と同様・同速度の作業が可能=機能性大
  • デザリング接続であり「いつでも、どこでも」接続ができる =機能性大 
  • パケットを抑制、1か月(20日×4時間)の使用で1.7GBのみ(料金変動なし)=安価 

安価で安全、機能性の高いテレワークシステムを実現

■デザリングによるテレワークシステム全体図

社内との連携の様子

在宅で社内と同じ仕事が可能。『働き方改革』を実現した。

成果

成果①:かんばん遅延(月当たり)発生件数の削減
成果②:残業時間の削減(生産管理メンバー4名・月別日当たりで比較)
成果③:Mさんインタビュー(2021年1月28日の)抄録

Mさん:勤務形態 パート(在宅) 4時間/日 10時から15時 週5日 休業の制限なし 。2020年12月16日 からスタート 

テレワークを始めて1か月がたちました。退職してから5年間仕事をすることもなくすごしてきました。5年ぶりに仕事をして、やりがいを感じ、会社のみなさんとコミュニケーションを とりながら働ける喜びを感じました。

先日、社長がおみえになり「会社の役に立っているよ」とのお褒めの言葉をいただきました。すごくうれしく思いました。25日には久しぶりにお給料をいただき、仕事をしてお金を稼ぐことの大事さを実感しました。旦那さんに明細を見せたら喜んでくれました。

わたしはラッキーだと思います。働きたくても家庭の事情で働けない女性、さがしても通える範囲に勤め先を見つけられない女性をたくさん知っています。そういう人たちにもチャンスがあればいいなと思います。


今後の展開

Mさん:2021年4月(下の子が保育園入園) 勤務時間を9時―16時(6時間/日)とし担当業務を拡大する 「原価管理」「管理会計」担当業務を拡大 ⇒ 最も効率的な生産指示 

現生産管理スタッフ:結婚、出産、親さんの介護の可能性がある。現実となったとき、彼らの経験、技能、相互の信頼関係を活かしテレワーク・働き方改革での雇用を維持し事業のレベル低下をさせない 

新規雇用による組織の活性化 2021年4月 新卒者6名雇用 (うち2名は生産管理に配属)生産管理を強化し高度化し生産性を向上する より攻撃的で効果的な生産管理 最適生産で生産性の向上を図る 

テレワークの活用でより生産性・収益性を高める

まとめ

新型コロナウイルスは、テレワークの技術を格段に進化させ特別なことではなくなりました。しかし当社 のような中小企業においては、まだまだ高いハードルでした。そのような状況でありましたが「テレワーク 実証事業」としてチャンスをいただき実践し、大きな成果をあげました。

本事業の成果を県内中小企業のみなさまと共有させていただくことで、テレワークシステム導入のハードル が低くなればと期待します。また、この実証が、家庭環境(結婚による遠隔地への移住、出産・子育て、 介護など)による優秀人材の離職・損失を無くすこと、あるいは女性が家庭環境と整合性をとりながら 活躍できる場を提供することにより人材を確保するツールとして有効であることをご理解いただければ 幸いです。 加えて、テレワーク(在宅勤務)を実施し出勤者の数を少なくすことで、オフィス内の3密を回避し新型 コロナウイルス感染症の拡大防止を進めながら業務の質を落とさず事業の継続を図ることができます。

本事業の評価として「事業の独創性・先進性」が問われました。その結果はみなさまにご判断いただき ますが、当WGとしては『テレワークを活用した働き方改革・女性活躍社会の実現-優秀人材確保のため のテレワーク導入実践事業-』を展開しその実現と成果を実証できたことを大きな成果といたします。


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